ソフトバンク、ABBロボット事業買収の真意はどこにあるのか?
ソフトバンク、ABBロボット事業買収の真意はどこにあるのか?
おや、またソフトバンクが動いたな、というのが正直な第一印象でしたね。あなたも、このニュースを聞いて、孫さんの次の一手は何だろう?って、ちょっとワクワクしませんでしたか? 2025年10月8日、ソフトバンクグループがスイスのグローバル技術企業であるABB Ltd.のロボティクス事業を、総額53億7500万米ドル、日本円にして約8187億円という巨額で買収する契約を締結したという報せ。これは単なる数字の羅列以上の意味を持つ、と私は見ています。
AI業界を20年近く見てきた私からすると、この手の大型M&Aは、単なる企業の成長戦略以上の意味を持つことが多いんです。シリコンバレーの小さなスタートアップが、あっという間にユニコーンになるのを見てきたかと思えば、日本の老舗企業がAI導入で苦戦する姿も数多く目にしてきました。その中で、ソフトバンクグループが掲げる「人類の知能を大きく上回る人工超知能(ASI)の実現」という壮大なミッション、これはもう、彼らのDNAに深く刻み込まれていますよね。彼らは常に、そのミッション達成のために、大胆な投資と戦略的な事業再編を繰り返してきました。今回のABBロボティクス事業の買収も、その文脈で捉えるべきでしょう。
今回買収対象となったABBのロボティクス事業、これはもう、産業用ロボットの世界では揺るぎない地位を築いてきた老舗中の老舗です。特に、工場で精密な作業をこなす大型ロボットアームの技術は世界的に評価が高く、その堅牢性、信頼性、そして長年にわたるブランド力は折り紙付き。エレクトリフィケーション、モーション、プロセスオートメーションといった幅広い分野で培われたABBの技術は、まさに「フィジカルな世界」における知見の塊と言えます。
ソフトバンクが狙うのは、このABBが持つ「フィジカルな強み」と、自社の「AI、ロボティクス、次世代コンピューティング」という「デジタルな強み」の融合です。彼らが「フィジカルAI」と呼ぶ領域、これはつまり、AIが単なるデータ処理だけでなく、現実世界で物理的に行動し、学習し、進化していく未来を描いているわけです。例えば、これまでプログラムされた動きしかできなかった産業用ロボットが、AIの学習能力によって、より複雑で予測不能な状況にも自律的に対応できるようになる。これは、製造業だけでなく、物流、医療、サービス業といったあらゆる産業に革新をもたらす可能性を秘めています。
買収は、ABBがロボティクス事業をカーブアウト(切り出し)して新設する持株会社の全株式を、ソフトバンクグループの子会社が取得するという形で行われます。完了は2026年半ばから後半の見込みとのこと。このタイムラインも、ソフトバンクが長期的な視点でこの投資を捉えていることを示唆していますね。最近では、Boston Dynamicsの買収と売却、そしてまた別のロボット企業への投資など、ソフトバンクのロボット分野への関心は一貫しています。NVIDIAやGoogleといったAI半導体やクラウドAIの巨人たちも、このフィジカルAIの領域には虎視眈々と狙いを定めているはずです。彼らが提供する高性能GPUやTPU、そして大規模なクラウドインフラは、フィジカルAIの「脳」となる部分を支える重要な要素ですからね。
投資家として見れば、これは長期的な視点が必要な投資です。短期的なリターンを追うのではなく、ASIという壮大なビジョンがどこまで現実のものになるか、その進捗をじっくりと見守る覚悟が問われるでしょう。ソフトバンクの過去の投資ポートフォリオを見ても、成功と失敗が混在しています。しかし、彼らのビジョンと実行力は常に業界を揺り動かしてきました。
技術者にとっては、これはまさに夢のような話かもしれません。ABBの持つ堅牢なハードウェア技術と、ソフトバンクが推進する最先端のAIアルゴリズムが融合する現場は、新しいイノベーションの宝庫になるはずです。例えば、AIを活用した予知保全システムや、人間と協調して作業する協働ロボット(コボット)の進化など、具体的な応用例は枚挙にいとまがありません。しかし、もちろん、異なる企業文化の融合、技術的な擦り合わせ、そして何よりも「フィジカルAI」という未踏の領域での挑戦は、決して平坦な道ではないでしょう。過去にも、期待された技術が市場に受け入れられなかった例は枚挙にいとまがありませんからね。特に、AI倫理やセキュリティといった課題も、この分野では避けて通れない重要なテーマとなります。
この買収が、私たちの未来の働き方、暮らし方をどう変えていくのか、あなたはどう思いますか? 正直なところ、私自身もまだ全貌は見えていません。しかし、1つだけ確かなのは、AIとロボットが融合する「フィジカルAI」の時代が、想像以上に早く、そして深く私たちの社会に浸透してくるだろう、ということです。この大きな波に、私たち一人ひとりがどう向き合っていくのか、それが問われているのかもしれませんね。