NTTデータの「LITRON® CORE」は?
NTTデータの「LITRON® CORE」は、本当にAIエージェントの未来を切り開くのか?
またエージェント型AIか、正直なところ、個人的には少し懐疑的だったんだ。AI業界を20年も見てきた僕からすると、この手の話は何度も耳にしてきたからね。シリコンバレーのスタートアップが鳴り物入りで発表したものの、結局はRPAの延長線上で終わってしまったり、期待と現実のギャップに75%以上の企業が直面してきたのを、あなたも感じているかもしれない。でも、NTTデータが本気で仕掛けてきたこの「LITRON® CORE」、君はどう感じるかな?今回は、その真意と可能性について、僕なりの視点で深掘りしてみたいと思う。
僕がこの業界に入った頃、AIはまだ「エキスパートシステム」なんて呼ばれていて、ルールベースで動くものが主流だった。それが機械学習、ディープラーニングと進化し、今や大規模言語モデル(LLM)が当たり前のようにビジネスに導入され始めている。この20年間で、AIが自律的に動いてくれたらどんなに楽になるかって夢見てきたけど、なかなか現実にならなかったよね。75%以上の企業がAI導入に踏み切ったものの、PoC(概念実証)止まりで、全社展開に至らないケースも山ほど見てきた。その大きな理由の1つが、AIが「ツール」の域を出ず、自律的に業務を遂行する「エージェント」になりきれなかったことにある。
今のオフィスワークが抱える課題は山積している。定型作業による従業員の負担、特定の個人に業務が集中する属人化、それによる品質のばらつき、そして何より深刻な人口減少による労働力不足。これらを解決するには、AIがもっと深く、もっと自律的に業務に入り込む必要があるのは、あなたも感じているはずだ。単にデータを分析するだけでなく、ユーザーの意図を理解し、自ら計画を立て、実行し、結果を評価する。そんな「Smart AI Agent」の実現こそが、次のフロンティアだと僕は考えている。NTTデータグループが目指すのも、まさにこの「Smart AI Agent」の実現であり、LITRON COREはその中核を担う基盤として位置づけられているんだ。
NTTデータが今回発表した「LITRON® CORE」は、まさにその課題に真正面から挑むものだと言える。彼らが強調する主な特長は、単なるAIツールを超えた「エージェント型AI基盤」としての包括性にある。
まず、パーソナルエージェントの概念だ。これは、ユーザーの過去の履歴や特性を学習して、関連情報を検索・選別し、最適な計画を立案してくれるというもの。これはまるで、長年連れ添った優秀な秘書が隣にいるようなものだよね。例えば、僕が過去に書いたレポートの傾向を理解し、次に書くべき記事の構成案を提案してくれる、なんてことが可能になるかもしれない。
次に、自然言語でのワークフロー生成。これは非常に強力な機能だ。「あの資料を作って、関係者に共有して」と自然言語で指示するだけで、業務プロセスを自動で設計し、実行してくれる。しかも、一度作ったワークフローは再利用可能だというから、これは大きな効率化に繋がるだろう。RPAが「記録された手順を繰り返す」のに対し、LITRON COREは「意図を理解して手順を生成する」という点で、一線を画している。
そして、LITRON COREの真骨頂とも言えるのが、マルチエージェント構造だ。複数のエージェントが連携して複雑なタスクを遂行し、必要に応じて新しいエージェントを自動生成する。これは、まるで小さな専門家チームが自律的に動いているようなイメージだ。例えば、市場調査エージェントが最新の業界トレンドをWeb検索で収集し、分析エージェントがそれを解析してSWOT分析を行い、資料作成エージェントがその結果を基にプレゼンテーション資料にまとめる、といった具合だね。この連携と自律的なエージェント生成の能力が、多様な業務への対応を可能にする。
さらに、NTTデータはすでに「LITRON Sales」や「LITRON Marketing」といった業務特化エージェントも提供している。これは、特定の業務領域で即戦力となることを目指しており、LITRON COREという汎用基盤の上に、具体的なビジネス価値を生み出すアプリケーションを積み上げている形だ。
このLITRON COREを支える技術も興味深い。特に注目すべきは、Task Planningで複数のタスクからなる業務処理を自律的に分割・整理し、ワークフローを自動生成する点だ。これは、複雑な業務をAIが理解し、実行可能なステップに落とし込むための頭脳と言える。また、Multi Agentで複数のAIエージェントを組み合わせて情報連携を実現し、アウトプットの質を向上させる。これは、単一のAIでは難しい高度な判断や多角的な視点を取り入れるために不可欠な要素だ。
データの高度な解釈による検索を実現するAdvanced RAG(Retrieval-Augmented Generation)も、LITRON COREの精度を担保する上で非常に重要だ。LLMが持つ知識だけでなく、社内外の最新かつ正確な情報を参照することで、より信頼性の高いアウトプットを生成できる。そして、Agent Opsは、業務ドキュメントから検証用データを生成し、各種手法の組み合わせを最適化・評価し、適用から運用までをサポートする。これは、AIエージェントを実業務で安定稼働させるための、いわば「縁の下の力持ち」だ。最後に、UITL (User In The Loop)は、ユーザーのフィードバックをもとにエージェントのワークフローや出力を自律的に改善し、継続的な改善サイクルを確立しようとしている。これは、AIが「使われながら賢くなる」ための仕組みであり、単なるツール提供ではなく、AIを業務に深く根付かせるための包括的なアプローチだと評価できる。
社内システム、クラウド、SaaS、Web検索による社外情報、ユーザー情報など、社内外のデータを横断的に活用できるというのも、現代のビジネス環境においては非常に重要なポイントだ。データがサイロ化している企業にとっては、これだけでも大きな価値があるはずだ。そして、忘れてはならないのが、OpenAIとのグローバルでの戦略的提携だ。これは、NTTデータが最先端のLLM技術をLITRON COREに組み込む上で、非常に強力な後ろ盾となるだろう。最新のGPTモデルの能力を最大限に引き出し、LITRON COREの知性を高める上で、この提携は不可欠だ。
NTTデータは、LITRON Marketingおよび関連サービス全体で2027年度末までに累計100億円、さらに生成AI事業全体では2027年までに1000億円の売上を目指していると聞いている。これはかなり野心的な目標だよね。彼らがこの数字を達成できるかどうかは、LITRON COREがどれだけ75%以上の企業に深く浸透し、具体的なROI(投資収益率)を提示できるかにかかっている。特に、日本の大企業がこれだけ大規模な目標を掲げてAI事業にコミットするのは、僕が20年間見てきた中でも、かなり本気度が高いと感じる。
投資家として見ると、NTTデータのような大企業が本腰を入れてエージェント型AIに参入してきたことは、市場全体の活性化に繋がるだろう。ただし、競合も多い。GoogleのGeminiやMicrosoftのCopilot、あるいはAnthropicのClaudeなど、グローバルなAIプレイヤーも同様のエージェント機能を強化している。LITRON COREが他社製品とどう差別化し、どれだけ早く市場シェアを獲得できるか、その動向を注意深く見守る必要がある。特に、特定の業界に特化したソリューションをどれだけ早く展開できるかが鍵になるかもしれないね。日本の商習慣や企業文化に合わせたきめ細やかな対応は、NTTデータのような国内大手ならではの強みになり得る。
技術者としては、LITRON COREのようなプラットフォームが登場することで、AIエージェント開発の敷居が下がる可能性がある。自社でゼロから構築するよりも、既存の基盤に乗ることで、より早くビジネス価値を生み出せるようになるかもしれない。特に、UITLのようなフィードバックループの仕組みは、AIの継続的な改善において非常に重要だから、この部分の使いやすさや効果はぜひ注目してほしい。OpenAIとの連携も、最新のLLMをどう活用していくか、そのベストプラクティスを学ぶ良い機会になるはずだ。また、Task PlanningやMulti Agentといった基盤技術が、どれだけ柔軟にカスタマイズできるか、既存システムとの連携がスムーズに行えるか、といった点も、導入を検討する上で重要な評価ポイントになるだろう。
正直なところ、エージェント型AIはまだ発展途上の技術だ。完璧な自律性を期待するのは時期尚早かもしれないし、予期せぬエラーや倫理的な問題が発生する可能性もゼロではない。しかし、NTTデータがこれだけ包括的なアプローチで「LITRON® CORE」を投入してきたことには、大きな可能性を感じている。彼らが過去のAI導入の失敗から学び、より実用的なソリューションを提供できるか、それが問われているんだ。日本の企業が抱える労働力不足という喫緊の課題に対し、LITRON COREがどこまで貢献できるか、僕も引き続き注目していきたい。
君は、このLITRON COREが、日本の、いや世界のビジネスシーンを本当に変革する起爆剤になると信じるかい?それとも、また新たな「期待先行」で終わってしまうと見るかな?